8月4日~8日にアンカレッジで開催されたデータマイニングの国際学会「KDD2019」で論文を発表してきましたので簡単にレポートしていきます。
KDDは今年で25回目を迎えたデータマイニングの国際会議で、毎年世界中から多くの研究者が集まるトップカンファレンスの1つです。2019年は51ヶ国から3,150人が参加しました。Research Trackには1,179本の論文が投稿され、そのうち、プレゼンテーションに進んだ論文は111本(約9.7%)となっています。
発表論文:「The Resale Price Prediction of Secondhand Jewelry Items Using a Multi-modal Deep Model with Iterative Co-Attention」
発表したのは2日目に行われたWorkshop 「AI for fashion」
論文はリユースアイテム小売業者の協力のもと、中古ジュエリーの再販価格を画像深層学習によって予測するモデル研究したものです。
再販価格決めるためには、アイテムのスペックだけでなく、デザインも大きく影響するため、専門知識とスキルを持った人材が必要不可欠です。また、適正な価格を決めることは、商品の在庫コントロールにも影響を与えます。そこで、これらを自動化することで、業務プロセスと利益の改善を行うため研究を進めました。
モデル概要
本研究では、商品画像とスペック情報を組合せたマルチモーダルニューラルネットワークを構築し、反復的に学習させることで、専門知識を必要とせずに中古ジュエリーの再販価格を評価することが可能なシステムを構築する方法論を確立することが出来ました。
詳しくはこちらにまとめられていますので、興味のある方はご覧ください。
※本研究は、富士ゼロックス株式会社と共同で進めてきたものです。
Workshop Dayでは34と多くのWSが開催されていましたが、私が参加した「AI for fashion」「AdKDD」の中で気になった発表を2つほど紹介します。
Predicting Next-Season Designs on High Fashion Runway
ファッションショーのランウェイの画像を学習し、抽出した特徴量をLSTMと組み合わせて、デザイナーごとに来シーズンのトレンドを予測するというもの。学習に使用した画像はなんと32年分の256,907枚。ファッションのWSは画像を予測にどう活かすかという内容が多い印象だったのですが、この研究はその中でも視点が面白いと思った発表のひとつです。
Tencent Ads: Interesting Problems and Unique Challenges
こちらはTencent Adsの発表の中でもインパクトがあった動画広告の研究。
動画内の物体を検知し、広告を配置するスペースを抽出。さらに動画のパース、背景の光や彩度を検知して、オブジェクトを自動でジェネレートして配置するというもの。近年、動画広告の進化は目覚ましいですが、これには圧倒されました。
最後に
アンカレッジに3,000人以上が集まったため、ホテルでオーバーブッキングが起きたり、会場が人で溢れかえったりしていた今回のKDDでしたが、世界最先端の研究に触れることができ有意義な時間となりました。また、参加者は欧米やインド、アジアといった方々がまだまだ多い印象でしたが、日本人の参加者も年々増えているようです。
26回目を迎える来年はサンディエゴで開催予定です。